nandemopoem

みのまわりにあるものを詠んだ詩

雑貨

段ボールカッターの詩

段ボールカッター、その刃は細く、鋭く、ただの道具に過ぎないようでいて、実は新たな始まりを切り開く鍵—引っ越しの箱、新しい物の包みを解くたび、彼の鋭い歯が未知への扉を静かに開ける。 この小さなカッターは、紙の海を航海する船、ダンボールの層を滑…

ウイスキーグラスの詩

ウイスキーグラスは、夜の語り部。 静かに煌めく闇の中で熟成された秘密を守る。その厚みのある底には、時間が凝縮され、 炎のようにゆっくりと燃える。グラスを傾けるたび、琥珀色の液体が光に透け、遠い土地の古木、煙たい空気、泥と蜜の記憶が蘇る。 この…

フライパンの詩

フライパンは、台所の孤高の詩人、金属の舌で語る、炎と食材の叙事詩。それは、朝の光の中で油を受け、熱に身を委ねる度に、味わい深い物語を紡ぎ出す。 この円盤は、日々の料理を芸術に変える魔法の道具、平凡な野菜や肉を、舞台上の星に変える。フライパン…

トミカのミニカーの詩

トミカのミニカー、それは小さな金属の夢。手のひらで転がるその愉快な世界は、子供たちの無限の想像力を運転席に乗せ、床の上、テーブルの端、未知の大地を駆け巡る。 彼らは静かな佇まいながら、色とりどりの冒険者。小さな車体には大きな物語が詰まってお…

コンパスと定規の詩

彼らは寂寞の机上で、理想の形を追い求め、数学の厳密な言葉を、無声の詩として紙上に描き出す。 コンパス、その一点から放たれる円弧は、世界の本質を探る探求者。彼は無限の軌道を描きながら、完全と秩序を求め、空白のキャンバスに動きと生命を与える。 …

サランラップの詩

サランラップ、透明な守護者、日々の営みの中で静かに存在感を放つ。彼は無色のヴェールを展開し、食べ物の命を延ばすために、息をひそめて待つ。 この薄いフィルムは、キッチンの見えない英雄、時間と腐敗との戦いで、静かに、しかし確実に勝利を収める。彼…

カチューシャの詩

カチューシャは、時間の潮目にそっと浮かぶ光の舟。頭上、彼女の思考の海を静かに渡る、それはあまりにも脆く、あまりにも美しい。星屑のように細やかで、宇宙のように広大な意味を内に秘めて。 彼女がそのアーチを頭にのせる瞬間、世界はひそかに軸をずらす…

ポストイットの詩

ポストイット、それは小さな色彩の舟。目に見える思考のかけらたちを乗せ、デスクの海、モニターの岸辺、本のページに静かに、しかし確かに停泊する。 この軽やかな紙片は、忘れがちな私たちに、小さなアンカーを提供する。「忘れないで」と、どこからか文字…

ポスターフレームの詩

ポスターフレームは、壁に懸けられた静かな窓窓の向こうには別の世界が広がり、見る者を遠くへと誘う。それはアートの守り手、境界を定める番人、ひとひらのポスターを永遠の展示品に変える魔法の箱。 四角いフレームは、ただの装飾品ではない。記憶を捕らえ…

キッチンペーパーの詩

キッチンペーパー、それは何げない日常の中での静かな守護者。純白のシートは、黙ってキッチンのカオスを受け止める。油の滴、水のしぶき、未完のソースの残骸を拭き取り、無言で、けれど確かに、綺麗に整える。 この単純な存在は、台所の詩人、小さな事故と…

エプロンの詩

夜更けのキッチン、月光がそっと窓辺に憩う。彼女はエプロンを身に纏い、静寂と向き合う。その布は、月夜に語りかける幽玄の衣、彼女の孤独な影を優しく包み込む。 このエプロンはただの布ではなく、夢と現の狭間を彷徨う幻想の翼。彼女が料理をする姿は、ま…

リップスティックの詩

朝、彼女は窓辺でリップスティックを選ぶ。朝日が唇に落ちる色を照らし出す。「今日はどんな自分でいようか」それは毎朝の小さな旅立ち。 赤い色を選べば、彼女は勇敢になる。街を歩く足取りも、少し軽やかに。ピンクは、優しい言葉を運ぶ日。笑顔が、ふとし…

湿度計の詩

部屋の隅、静かに佇む守護者、湿度計。空気の息吹、見えざる水の精を測る、我々の感じ得ない微細な変化を、黙々と、確実に、記録し続ける。 この小さな窓は、見えない世界への扉、空気の繊細なバランスを映し出す。湿り気の多い日も、乾燥が厳しい時も、その…

折りたたみ傘の詩

都市の雨粒が、アスファルトに軽やかに舞い降りる時、ひとつの小さな守り神が、その力を静かに解き放つ。折りたたみ傘—手の中でひそやかに開く、天と地をつなぐ、移動する小さな避難所。 この薄暗い空の下、人々は行き交い、彼らの上を、無数の色と形の傘が…

バスソルトの詩

夜の帳が下り、静寂が部屋を包む頃、ひとつの儀式が始まる。水の舞台に溶け込む、一粒の魔法—それは入浴剤、心の潤滑油。 水面に触れるなり、ひそやかに開花し、香り高く、色とりどりの花びらを散らす。湯の中で踊り出す、エッセンシャルの精霊たち、疲れた…