nandemopoem

みのまわりにあるものを詠んだ詩

カチューシャの詩

カチューシャは、時間の潮目にそっと浮かぶ光の舟。
頭上、彼女の思考の海を静かに渡る、
それはあまりにも脆く、あまりにも美しい。
星屑のように細やかで、宇宙のように広大な意味を内に秘めて。

彼女がそのアーチを頭にのせる瞬間、
世界はひそかに軸をずらす。
街の喧騒も、時間の流れも、ちょっとした悲しみも、
すべてが違う角度から照らされ始める。

カチューシャの下で、彼女の髪は黒い海の波のよう。
夜の海を泳ぐように、指の間をすり抜ける。
それぞれの髪の毛が小さな物語を語り、
カチューシャはそれを静かに聞き、空に放つ。

この小さなアクセサリーは、ただ物を留めるだけでなく、
彼女の内なる宇宙と外界との間で、
見えない橋をかける。髪を整え、心を澄ます。
毎朝、彼女は新たな自分をこの半円に託す。

日が落ち、部屋の灯がともる頃、
彼女はカチューシャをそっと外し、
その日一日の重さを、枕元に置かれたそれに託す。
夜の静寂の中で、カチューシャは彼女の代わりに夢を見る。

それは、少女たちが描く、星の詩。
言葉にはならないけれど、心に響くリズム。
彼女とカチューシャの間には、見えない約束がある。
「また明日、新しい世界を一緒に歩もう」と、
静かな夜に、そっと囁かれる。