nandemopoem

みのまわりにあるものを詠んだ詩

ウイスキーグラスの詩

ウイスキーグラスは、夜の語り部

静かに煌めく闇の中で熟成された秘密を守る。
その厚みのある底には、時間が凝縮され、

炎のようにゆっくりと燃える。
グラスを傾けるたび、琥珀色の液体が光に透け、
遠い土地の古木、煙たい空気、泥と蜜の記憶が蘇る。

この小さな容器は、単なる飲み物を注ぐ場ではなく、
感覚の宮殿、感情の海を航海する船。
ウイスキーが触れる唇は、

時間を超えた旅への招待状を受け取り、
一口ごとに、その深い味わいが過去と未来、夢と現実の狭間を繋ぐ。

ウイスキーグラスは、その形状によって話が変わる。
広がるリムは香りを放ち、狭まる口は味を集中させる。
それは飲む人の手の中で生きており、
グラスが持つ重みは、保持される歴史の重さを感じさせる。

夜にグラスを持ち、静かに部屋で瞑想すると、
ウイスキーの滴は過去の職人の技を語り、
その蒸留されたエッセンスは、ただ酔わせるだけでなく、
心を解き放ち、ゆっくりと内省の時間を深める。

ウイスキーグラスは、精神を解放する鍵、
その中の液体は、文明の変遷と共に歩んできた。
一晩中、この小さなグラスが織りなす詩を聞きながら、
私たちは静かに飲み、語り、生きた詩を紡ぐ。
ウイスキーグラス一杯の中には、ただのウイスキーではなく、
一つの宇宙が存在し、その深遠な物語に酔いしれるのだ。