nandemopoem

みのまわりにあるものを詠んだ詩

フライパンの詩

フライパンは、台所の孤高の詩人、
金属の舌で語る、炎と食材の叙事詩
それは、朝の光の中で油を受け、
熱に身を委ねる度に、味わい深い物語を紡ぎ出す。

この円盤は、日々の料理を芸術に変える魔法の道具、
平凡な野菜や肉を、舞台上の星に変える。
フライパンの上では、ジュウジュウという音がリズムを刻み、
シズルのメロディーがキッチンを満たす。

熱はその身を徐々に包み込み、変化を促す—
野菜は色を深め、肉は表面を焼き固める。
それは、時間と温度の詩を作り、
調理の毎瞬間が、食材の真実を引き出す。

この鉄の詩人は、食べ手の心をも満たす。
フライパンが誘う香りは、記憶の奥深くを呼び覚ます。
幼い日の朝食、祖母の手料理、忘れられないあの夜の晩餐、
すべてがフライパンの縁から、ふとした瞬間に立ち上る。

その表面には、無数の焼き跡が時の証として刻まれ、
使い込むほどに味わいが増す。
フライパンはただの調理道具ではなく、
炎と鉄と手仕事が織り成す、耐えがたい誘惑の源。

長年にわたり、このフライパンは家族の一員となる。
その取っ手は、無数の手に握られ、
その体は無数の食卓を支える。
フライパン—それは毎日を彩る、厨房の無冠の王。

料理をするたび、この鉄の舟は新たな旅に出る。
フライパンの中で、常に何かが生まれ、何かが終わる。
それは変わりゆく世界の小さな象徴、
炎と金属と手仕事が紡ぐ、永遠の詩。