nandemopoem

みのまわりにあるものを詠んだ詩

リップスティックの詩

朝、彼女は窓辺でリップスティックを選ぶ。
朝日が唇に落ちる色を照らし出す。
「今日はどんな自分でいようか」
それは毎朝の小さな旅立ち。

赤い色を選べば、彼女は勇敢になる。
街を歩く足取りも、少し軽やかに。
ピンクは、優しい言葉を運ぶ日。
笑顔が、ふとした瞬間に咲く。

ヌードを選べば、素顔の自分を受け入れる。
何も隠さず、ただの私でいる。
パープルは、秘密を抱えているような日。
少しの冒険心を胸に秘めて。

彼女がリップスティックを塗るのは、
ただ顔を彩るためではない。
それは、その日一日の自分自身との約束。
唇に色をのせることで、
「今日も、自分らしくいよう」と決める。

夜、彼女がその色を落とすとき、
一日の終わりを告げる儀式。
鏡の中の彼女は少し疲れて見えるかもしれない。
でも、その顔には小さな満足が宿る。

「今日、私は私らしくいられたかな」
静かに彼女は問いかける。
「うん、今日も、私らしくいられたよ」
鏡の中の彼女は、そう言って微笑んだ。

次の日の朝、彼女はまた新しい色を選ぶ。
それは彼女の小さな儀式、
彼女自身との、小さな約束。
リップスティックは、他の誰のものでもない
彼女の物語を、一日一日、静かに彩っていく。