nandemopoem

みのまわりにあるものを詠んだ詩

クローゼットの詩

クローゼットは、静かな部屋の奥深くに潜む、
時間の番人、記憶の保管庫。
そこには、重ねられた生地の間に、
過ぎ去った季節の香りが染みついている。

扉を開けるたびに、過去の自分に出会う—
夏のリネン、冬のウール、それぞれの織物が
かつての日々のエコーを私に囁く。
幻のような春の夜、忘れられない秋の午後。

この小さな空間に、人生の舞台裏が隠されている。
愛した服、もう着ない服、思い出深い服。
それぞれが、無言のドラマを演じ、
感情の糸で繋がれた一節を紡ぎ出す。

クローゼットは、私たちが身を包む物語を守る。
静かに、確実に、時の流れを見守りながら、
生活の一部として、そして心の一部として存在する。
扉を閉じれば、その物語はまた暗闇に包まれる。

しかし、扉が開くたび、新たな章が始まるのだ—
過去と現在が交錯し、未来への布石が置かれる。
クローゼットはただの収納ではない、
それは時を超える旅をする、詩のページなのだ。